目の前にものすごくたくさんの器やグラス、調理器具がある。
余っている器や調理器具は売れるものなら売ってしまった方が良い。
相手は必要なものを安く購入でき、こちら側はお金に変えることができる。
倉庫から全部の備品を引っ張り出す。
、、、ヤバいくらいの量。
スタッフ総出で運び出しても、丸一日かかった。
それにしてもあり得ないくらいの数。小さなレストランなら余裕で5店くらいは開けそうなくらいの量だ。
営業終了後翌日、在庫処分が始まった。
今日はそんな話。
中々興味深かったので、これも記録に残しておこうと思う。
まず、レストラン用品を買いに来る人には3つの客層がいる。
1:レストランオーナー
2:料理人
3:一般人
自分はどちらかと言えば2の料理人に近い感覚だ。
なので1と3の人の興味がいまいちわからなかったけど、今回の件でとても勉強になったことがある。
わかりやすく2の料理人の購買意欲から説明します。
もちろん職場の規模によってまちまちだけど、基本料理人は料理を盛り付けてカッコいい器を選ぶ。もしくはお客さん受けしそうな器を選ぶ。はたまた個人的に好きで使いたい器を選ぶ。
となると、数は少なくてもちょっとレアな器やグラスを選ぶことになる。
その気持ち、めちゃくちゃわかります。
実際、何人か料理人がきたが、なかなかお目が高い。
僕もそれを選ぶだろうと思うような器が早々に売れていく。
*ちなみに3つの客層どれも手に取るものは同じだったりもする。
次に1のレストランオーナー
これは特に10~20人程度の小規模の飲食店ではなく30以上の席数をもつ飲食店オーナーなんだけど、
この方たちは料理人の僕の感覚とはちょっと違っていた。
何が一番最初に取り置きしたいと言ってきたのか、、、
いくつかあるけど、まずはとり皿、シェアプレートと呼ばれる平皿だ。そして少し小さくなって醤油皿。
これは多くの飲食関係者が真っ先にキープしたいと申し出た器です。
またグラス関係でいうと、日本酒を入れる、徳利とおちょこ。
これも速攻無くなりました。
そしてこれらは、「全部買います」みたいなまとめ買いがほとんどだ。
100近くあっても、即答で「買います」と言ってくる。
理由はお分かりの通り、レストランで一番よく使いまわされる器やグラスであり、だいたいすべてのお客さんに使われるため数も必要。そしてしょっちゅう使うのでよく割れる壊れる。
だから大量買いしても全然問題ない。ということです。
これを見て「なるほどなるほど、たしかに」と思いました。
*でも安っぽいので自分は使いたくない。
また、これからお店をオープンする人も、かなり大量買いしてくれる。
それも当たり前だが、いちいち日本から高い輸送費かけて買わなくて済むからだ。
そして3の一般人。
これは完全に家で使う用。はたまたお店の常連さんの場合、記念に思い出の器を買っておこうみたいな気持ちで購入。
その他中国人とかは、珍しい和の食器を安く買って、別の人に高く売ろうと考えている人も結構な数いる。
これに関しては、すでにその傾向はわかっていたので、そのような“せどり”目的のお客さんは最初から呼んでいない。
そして一般のお客さんは、やたらと値段を聞いてくるが、考えに考え買わないパターンも多い。かなり厳選して購入する人がほとんどだ。
しかも1点2点と、かなりの少量。
販売者側からすれば、お小遣い程度の売り上げにしかならないので、はっきり言ってどっちでもいい客になる。
なので、だいたいは一般公開せず、最初はレストラン関係者で、「たくさん購入するだろう」と予想できる人だけに告知する。
または、相当よく来てくれた常連さんやスタッフの友達など、身近な人しか呼ばない。
一般人が最終的に呼ばれるのは、あまりに余って「残り物がでたから、見に来てください」というスタンス。
ただ、お小遣い程度にしかならないので、時間に余裕があればやってもいいかもというレベル。
まあ、そんな3つの客層を垣間見て、消費行動の差にちょっと驚きもあったが、
もう一つ。販売する金額に関して、興味深いこともあった。
その前に、正直セカンドハンドのモノって、値段がつけにくい。
理由は、いちいち市場価格を調べるのが面倒。そして今回のように種類が多いと値段決めるだけでも何日かかるかわからない。
だから、僕の場合、基本的に値段は決めずに、その場で決めるようにしていた。
ただ、事前に「これ欲しい」と注文があったり、
あとは「値段を決めてください!」と強く言われた場合は、なんとなくだけど僕の感覚で決めた。
まあ、基本高くはない提示だとは思う。
またヒトを見て値段を決めるという術もある。
特に一般人に売る場合、時間に対する効率がすこぶる悪いので、だいたい高めに設定する。そこから交渉をするという段取り。
その他にも、僕にとって価値がかなり低いものを買おうとしている人は、だいたいはその買い手の言い値でOKする。だってタダであげてもいいくらいのものなので、むしろ受け取ってくれてありがとうと言いたい。
記憶に残るもので言えば、掃除機だ。
ダイソンだけど、数年使っていて、電源はついて掃除機の機能としては果たすというレベルで、見た目汚いので売り物にはならない、というか、
普通にさっきまで、明日も使おうと思っていた掃除機が、、、売れた(笑)
最初「掃除機欲しい」と言われた時、「売り物じゃないんだけど」と言いそうになったが、「あ、そっかこれも欲しいんだったら売ればいいんだ」と思い直し、
$50で売った。
内心高いかな、と思ったけど、すんなりOKで、お客さんは喜んで持って帰っていった。(使いかけだったのに、、、)
さすがに、僕自身ちょっと心苦しかったので、その人が途中興味を示していた小さな日本人形をタダであげた。(実際これもだれも買うことがないと予想されるもの)
そんな感じで、人それぞれで面白いなと思っていたのですが、その中でも、なかなか「いいな」と思った交渉をしてきた人がいた。
僕はそのやり方は素晴らしいと思ったし、もし自分が買う立場だったら、このやり方を使おうと心に決めた交渉購入術を言います。
実際すごく単純ですが、これ出来る人はホントにいません。
さて、その答えは、
『買う前に売り手に、「$○○○分購入します」と先に予算を言うこと』
これ販売側の心理として、めちゃくちゃ効果大です。好感度一気に上がります。
ただポイントは、ケチった金額を提示しないこと。
例えば、「$20ぶん買います!」と言っても、そんなに突き刺さらない。
でも「$3000ぶんの器や調理器具を買う予定なのでよろしくお願いいたします。」と言われると、
ハッキリ言って、これはうれしい。
先にそんな額の買い物をしてくれるんだと思うと、僕もあれもいいなこれもいいなと想像できるし、
そんな大量買いしてくれるなら、まっさきにその人を優先させようと思う。さらには何かしらその金額以上のおまけもつけてあげようと思う心理が働く。
僕は一気に心打たれましたが、同時に「この人交渉メチャクチャうまいな」とも感じました。
相手の心を先読みして、どうしてほしいかを理解している。しかもそれがお金を払う側の人間だけど、それをしてくれるのは相当デキるなと思いました。
でも後日談、結局その金額ほどの買い物はしないで、さらに結構値切られました。
それでもある程度の量を買ってくれたのでよかったのですが、正直後で期待を裏切られるとこれはまた逆効果で「ズルい、セコイ」やり方だとも思うし、信用度も落ちます。
こんなやり取りでも人間模様は出るもので、
「この人とは、今後会いたくないな」とか思う場面も少なからずあり、最後の最後に人の本性をちょっと垣間見れた気がしました。
(*正直、売れようが売れまいが自分に金銭的メリットは無いので、ある意味公平に物事をみることができました)
似た話(交渉)でタクシーに乗る時もポイントがある。
大体の値段がわかっているときに、乗った行先を言った後すぐに少し多めの金額(チップも含め)でドライバーに現金で渡しちゃうんです。
すると、ドライバーは絶対喜ぶでしょ。間違いなく。
タクシーの運ちゃんは行先聞けば、だいたいの値段かどうかなんて瞬時にわかります。
それを先回りして、こちら側がちょっと多めの金額を先に払います。例えば$40くらいで着く場所なら$50渡しちゃう。みたいな。
一度やってみてください。
たいがいは、到着するまでとっても楽しく気分よく過ごせます。
へんな疑いで「遠回りしてんじゃないか、メーターいじってんじゃないか」みたいな懐疑心も一切なくなります。
まあ、近頃はウーバー主流なので、やることは少ないかもしれませんが、もし機会があればぜひ試してみてください。
*それを考えるとウーバーのシステムは神レベル。
、、、以上
購入のしかた、交渉術も含めて、たった一つの買い物に、その人間性って出てくるんだとあらためて感じました。
何気ない普段の買い物でも、気の使い一つで色々な物事が変わるんだなぁと思った出来事です。