こんばんは、金曜の夜、巷の空気が花金とやらでウキウキとしている中を出勤するひで蔵です。特に最近は、町のクリスマスライティングが目に染みるぜ…。
先々週はこのブログにて夜勤生活者の日常について書いたけど、実際、どんな仕事をしてるんだろう、と気になった方はいらっしゃるだろうか?え、そんなのどうでもいい?
私はホテルのナイトマネージャーをしていて、その所属部署はフロントオフィスということになる。
ホテルのフロントといえば接客、というイメージが浮かぶと思うけど…
接客はほとんどしないんだな、私の場合。
フツーの人ならもう寝ているような時間に仕事をするのだから、そりゃあ生身の人と話をする機会は少ない。
これも東京やロンドンといった、街が眠ることのないような大都市のホテルなら話は別だが、シドニーは24時間都市では全くない。
シドニー空港はCurfewという規制があるので、夜11時から朝6時までは飛行機の発着が出来ない…ってことは、この時間帯にホテルを出入りする旅人はほぼいないということになる。
レストランだって、ラストオーダーは9時とか9時半という所がほとんどだし、パブやバーだって零時にはほぼ店じまい。特に最近は街に人がいないしなあ…。
ということは、夜中にすることがほとんどないので、みなホテルの部屋に戻って寝てしまうのだ。金曜日や土曜日はパーティーアニマルが増えるけど、それでも大したことはない。
うちのホテルは宴会場もレストランもないので、11時過ぎになるとロビーは森閑としてしまう。
たまに歯ブラシや換えのタオルを届けたり、部屋の空調の不具合を見に行ったりしたりとか、夜中すぎの電話に「なんでこんな時間に…?」と思いながら受けこたえしたりしたりとかはするが、下手をすればゲストと会話を全く交わすことがない時間がやたらある。
前職がコンシェルジュで、その際はシフト中話しっぱなしでのどが渇いてしょうがないほどだったので、このギャップはすごい。
もちろん酔客がトラブルを起こす、火災報知器が鳴ってしまう、なんてことになると働いているスタッフが限りなく少ないので、すぐチェックメイトになってしまうが、まあそんな事を気にしていたらしょうがないので…何も起こらないことを祈るのみ。
「じゃあ何してるの?ヒマそうでいいね~」と思う人がいるかも知れないが、いや色々あるんですよこれが。
まず、何をおいてもやらなければいけないのが、業界用語で”Roll”という作業。
ホテルは24時間体制だから閉店時間というのがないのだが、どこかで一旦日付を変えないといろいろな数字が集計できない。まあこれは普通のカレンダーと同じ理屈ですわな。
でも、時計通りに24時に日付を変えると、まだチェックインしていないゲストがいたり、バーが営業していたりするので、ちと都合が悪い。
なので、そういったアクティビティが静まった頃を見計らってホテルのシステムの日付を変える。だからあまり忙しくない平日などはほとんど本当の時計と同じ頃に出来るし、深夜の活動がある金曜日や土曜日は2時頃まで出来ない場合もある。
このプロセス自体は、コンピューターが勝手にやってくれるのでこちらは何もしなくていいのだが、これをもし忘れてしまうと、ホテルオペレーションが前の日付をずるずると引きずってしまうので必須事項です。
その作業が終わると晴れてその日の諸々の指標が数値に出るので、それを基にして「本日の売上一覧」みたいなレポートを作成したりする。
次にやることが、「間違い探し」。ゲストの会計をチェックして、間違いがあったら修正するという地味だがとても大事な作業。
だって、チェックアウトする際に請求に不明な点やミスがあって時間を取られるのって最悪じゃないっすか。もしそれまでの滞在経験がよくても、ここでしくじれば印象が一気に悪くなる。
それを未然に防ぐため、間違った金額をチャージしていないか、朝食付きのプランの場合はそれがきちんと処理されているか…みたいなことをいちいち確認する。
正直こういう地味な仕事はめんどっちいので好きではないのだが、ともあれ仕事なので、
「あ~、あいつ(同僚)こんなミステークをやってるぜ!」
「うわ、このお客さん、バーでしこたま飲んでるな~。売上貢献ありがとうございます!」
みたいなことをブツブツ言いながら、ちまちまと作業している。
これは日勤の人の尻拭いというか、モップアップ的な仕事なので正直あまりというか全然エキサイティングではないが、フロント業務はコンスタントにゲストと対応しているので、落ち着いてじっくりと作業をしづらい環境にある。なので夜勤の人が、ゲストが少ない静かな時間にじっくりとチェックをするのは大事な作業なのだろう。
…そんなことをしていると、窓の外がうっすらと明るくなってきて、ああ、もう少しでアガりだ~。と思うとともに、じわりと睡魔が押し寄せてくる。
…で、あと5分で終わり!なんて時に限ってチェックアウトのゲストがやってきて、うっかり自分が見落とした会計のミスを指摘され、あちゃー、と自分のバカさを呪いながらゲストに誤りつつ修正する…なんてことは、たまにある。
そして朝番のスタッフと引き継ぎをして、寝ぼけた頭と体を引きずりながら、夜勤労働者は通勤の波と逆行して帰宅の途につくのである…。
こうしてまとめてみると、まさに裏方さんの仕事だ。これも前職の、美味しいところをかっさらうコンシェルジュとは正反対。
でも、どちらの仕事もホテルをやっていくのに不可欠ということは変わりがない。そんな立場の違いを結構楽しんでいる。