kinmokusei

東京では金木犀の花が一分咲き。

ふとどこからともなく漂うその女性的な甘く誘うような香りに、彼の主の居所を探してしまう。

そしてひととき、過去の想いに浸る…。

 

 

 

別に君を求めてないけど 横にいられると思い出す
君のドルチェ&ガッバーナの その香水のせいだよ

巷では少し前に「香水」という歌が流行ったようだけれど、香りから感情が蘇るという経験を多くの人が味わっているのだろう。

 

 

全ての感情というわけではない。

香りにリンクする過去の感情は「憂い」。

その切ないような心がうずく感覚にノスタルジックに浸る。

 

 

シドニーで金木犀を見かけたことはない。

東京を離れて以来、20年余、味わうことのなかった、心の隙間に吹く風を感じている。

このシドニーでの20年間は過去の感傷に触れることなく、新しい想いの積み重ねが私の心を占めていたようだ。

 

 

金木犀と共に心に蘇る感傷。

もう、何があったのか、はっきりと覚えてはいない。

色々な出来事とそれに伴う感情があったのだろう。

もう、痛くはない。

ただ、切ない想いをしたという感覚だけが胸に蘇る。

 

 

悲しくも寂しくもないけれど、ただ、この憂いに愛おしいような気持ちになる。

それは誰かへの想いではなく、過去の未熟な私への愛おしさなのだと思う。

金木犀、心の隙間に吹く風…。

今の私が過去の私を想うように、未来の私も今の私を想うことだろう。