シドニーで走るということ

今回は、シドニーがどんなにランナーにとって天国か、ということについて書いてみよう。

(ですので、ランニングなんか興味ねーよ、っていう人は読み飛ばしていいですからね。)

ランニング…かく言う私も、日本にいる頃は運動とは無関係の生活を送ってまして、よくありがちな大学のスキー、テニスサークルなんてのも入らなかったし、神奈川県民だったにもかかわらず湘南のビーチに海水浴、ってのもなかったし。何やってたんだろ…。

そんな無運動の習慣はシドニーに来てもずっと変わらなかったのですが、15年ほど前に友達に誘われCity to Surfという、世界最大のランニングイベント(らしい)に参加し、それに味をしめて現在では暇を持て余すと走りに行く…という準ランニングおたくになりました。

たまたま自分の性格や体質がランニングに合っていたということはあるのですが、シドニーに住んでいたからこそこうなった、という理由もあるんじゃないか、と思ってます。その理由をいくつか挙げてみますね。

いつ走る?

まず、シドニーでは一年中走れます。そういう気候なんですなあ。

もちろん日本だって、一年中走れないことはないけど、真夏で湿度も高く、立っているだけでも汗がにじむような日に走るのは熱中症になる危険大ですよね。冬は雪が降れば走れないし、雪がやんだ翌日には走るというよりはアイススケートをするようになるから、これもダメ。

それ以外でも、梅雨があったり台風があったりと、気分良く走る、つまり快走できる日が思ったより少ないような気がします。

かたやシドニーでは雪は降らないし、夏だって最高気温が40度行く日もたまにありますが、そんな暑い日でも湿度は割合低いので、朝晩に木陰の下を走ればけっこう爽快に汗がかけます。走った後のビールも美味いしね。

シドニーって、意外と雨も降るんですが、一日中降り続くようなことはあまりない。ザーッと降って止むような通り雨が多いので、雨降りレーダーを参考にし、頃合いを見計らって走ることだって可能です。

オーストラリアは広いので、これがもしもっと寒くて雨の多いメルボルンやタスマニア、もっと暑いブリスベンやダーウィンなどでは、それほど走るのに絶好な街、とは言えないんじゃないかなあ。シドニーで良かった!

ただ、昨年末のブッシュファイアのときは困りました。なんせ大気汚染が本当に深刻で、外に一歩足を踏み出せばバーベキューのような匂いが漂ってたし、空気が実際黄色く見えるような状態の日が何ヶ月も続きました。

もちろん大気にはPM2.5のような有害物質がたっぷり含まれているので運動なんてとんでもないのですが、それでも走らないとメンタルを保てないランニングおたくの悲しさ。風向きが変わってちょっと大気汚染がマシになった時を見計らって短い距離をささっと走っていました。

あの時は、走ったら身体に悪い、走らなかったら精神衛生に悪い、というどちらを取ってもダメ!と散々でした。ああいうことがなるべく起きないように、環境問題も考えないとなあ。

どこ走る?

次に、走る場所。いくらシドニーの天候がランナー向けでも、走る場所がなかったり、景色が単調だったりしたら余りモチベーションが上がらないと思いますが…

これがシドニーにはたくさんあるんだなあ。

例えば、私はシティの近くに住んでいるのですが、家から2キロほど走るとこんな景色に出くわすんですよ~。

 

走っている途中に撮りました

 

これはですね、何百回見ても見飽きませんよ、旦那。季節や時間によって海、空、街のビル群…の色合いが変わって、ほんとマジカルです。オペラハウスの美しさは、言うまでもないですよね。

この辺りは植物園の一部なので、車や信号もないのでマイペースで走れるのもありがたい。そしてもうちょっと行けばもう一つのランドマークであるハーバーブリッジも走ることが出来る。ここから一望できるシドニーハーバーは絶景ですよ~。

この他にも、家から逆方向に行くと、センテニアル・パーク(Centennial Park) という広大な公園があって、こちらも程よいランニングスポットです。

こんな場所ですが、たかだかシティから5キロほどの場所です。

 

ちなみにCentennial というのは百周年という意味で、オーストラリアがイギリスの植民地になって100年を記念して造られた公園だそうです。

とにかく広々としていて、ランナー以外でもサッカーやラグビーと行ったチームスポーツをしている人、サイクリスト、ピクニックをしている家族連れなどで賑わっています。なんと乗馬だってやってます。

公園の真ん中には一周3.7キロの周回路があるので黙々と走るには適しているし、公園の外縁を走るのはちょっとしたトレイルラン(ザックリ言うと、未舗装の道を走ることです)の練習になります。
ここを人があまりいない時間に走っていると周りの建物もほとんど見えないので、ここはどこなんじゃ?と思うくらい自然に溢れています。

街なかのランニングスポットといえばこれらが代表的ですが、これ以外でもちょっと足を伸ばせば国立公園の中をトレイルランできて、これも絶景スポットが山ほどあるので心がリフレッシュされますよ~。

ここはキツかったな~。でも絶景に次ぐ絶景だったけど。

 

このようにランニング環境に恵まれているので、ランナー人口も多いですよね~。ランニングクラブやコミュニティもたくさんあるので、一人で黙々と走るのがつまらなくなったら、一緒に走って交友を深めることができます。ランナー同士での情報交換も出来ますしね。

走ることについて

でも、ランニングのいいところは、ひとりで、いつでもどこでも走れることだろう。

 

最後にちょっとカッコつけた一文を…

 

何か気がふさぐようなことがあったりしたら、私はランニングシューズに足を入れて走りに行く。

 

しばらく腕を振り、脚を前後に動かし、自分の足音と息遣いを聞いていると、今まで凝り固まっていた気持ちがだんだんほどけていき、石を投げて乱れた池の水がだんだん静まるような心持ちなっていく。

 

「色々あるけど、まあいっか」

 

そして強張っていた表情もだんだん緩んでいき、私は微笑すらしながら走り続けるのだ。